用語集GLOSSARY

石部焼 いしべやき

 石部焼は文政年間(1818-30)石部に開窯したやきものです。石部宿(いしべしゅく)で知られるこの土地は東海道五十三次の51番目の宿場で、現在の滋賀県湖南市にあたります。この石部宿の豪商 福島治郎兵衛・藤谷治右衛門・植村仁右衛門たちが出資し、清水焼の陶工を招きました。原料に地元石部の白土も用い、釉薬などは京都より取り寄せて京焼や肥前陶磁の写し、色絵磁器も作っていました。

 天保年間の染付書銘のものが割合多く残っていることからこの頃が最盛期と推測できますが『天保年製 湖東石部』『於湖東石部郷製』などの書銘を見ると、まず間違えることはないでしょうが当時彦根の御用窯であった湖東焼を意識したものであることは明らかではないでしょうか。

 また一つ隣の草津宿には少し早い時期に姥ヶ餅焼が開窯しており、この街道沿いと宿場町に多くの人々の往来と豊かな文化が育まれたことが想像できます。