用語集GLOSSARY
比良焼 ひらやき
比良焼は琵琶湖西岸の比良山麓で焼かれたと言われています。膳所焼のように江戸初期まで遡るとも言われますが、開窯した時期も人物も窯の場所も詳しいことは何も伝わっておらず、まぼろしの焼物として知られています。比良山麓の白土が焼物に適していることを書いた江戸期の記録が知られていることや、伝世品に『比良』の印刻銘が見られることから近江ゆかりの焼物として伝わっているようです。
因みに安政四年(1857)刊行された江戸後期の茶人 金森得水の『本朝陶器攷証』で永楽保全の比良焼の見聞には、慶安年間(1648-51)の頃に仁清の弟子が開窯し古い地名に茶碗山・茶碗畑とあるのが窯跡や土取り場のあったところと伝えています。
伝世品には茶器が主で、半磁胎で手の切れる様な薄手の朝顔形の茶碗には、無地の物もありますが瀟洒な銹絵(鉄絵)で草花等を絵付けした名品がよく知られます。端正なフォルム・釉薬の具合や高台の処理など、その洗練された作風には17世紀末辺りの京焼との繋がりが色濃く感じられます。